謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
例えばあたしが田所と付き合ったら……そりゃ毎日楽しいだろうな。
他愛もないことで大笑いさせてくれて。
仕事の悩みは理解してくれるだろうし、辛い時は支えてくれて。
そんな日々が簡単に想像できる。
優と付き合ってた頃のあたしだったら、それもアリだな、いやそっちの方が気楽でいいかも、とか思ったかもしれない。
でも……
やっぱり何か、違う気がする。
その人の一挙手一投足にドキドキして、胸が痛いくらい苦しくて。
触れられるだけで、モノクロからカラーの世界にワープしたみたいな衝撃に全身が痺れて。
彼以外、何も目に入らなくなる――そんな経験をしてしまった今じゃ、友達としての“好き”と、異性としての“好き”、を混同することはできそうにない。
キョウ……どうしてるかな。
笑った顔、怒った顔、拗ねた顔……
いろんな表情が止めどなく脳裏に浮かんでは消え、胸の奥にジワリとやるせない想いが広がっていく。
あたし、こんな所で何やってるんだろう――
「お似合いじゃないかなぁ田所さんと相馬さん」
「へー……」
「……聞いてます? 相馬さぁん?」
加藤ちゃんに覗き込まれて、ハッと我に返った。
「、、え、ごめん、なんか言った?」
キョウの顔を慌てて頭の中から追い出して聞き返すと、なぜか疲れたような加藤ちゃん。
ん? 今夜の合コン、彼女的にハズレだったのかな?
「加藤ちゃん、ドンマイ?」
慰めるつもりで肩をぽんと叩く。
それから、ささっと荷物をまとめて立ち上がった。
「ごめんなさい、ちょっと急用思い出して。あたし、お先に失礼しますね」
「え、相馬さんっ!?」
「相馬!?」
驚いて声を上げる面々へ笑顔を向けて手を振り、ぺこりとお辞儀。
そのまま逃げるようにその場を後にした。
合コンで相手なんか、見つかるはずはない。
こんなにもまだ、キョウに惹かれてるんだもの。
そんなあたしが真剣に出会いを求める場に混じるなんて、彼らに対して失礼極まりない話よね。
となれば、帰る以外の選択肢が浮かばなかったんだ。