謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「わたしの確認が甘くって……ごめんね」
「え?」

差し出されたのは、1枚の紙。
今朝提出した記事広告のカンプだ。

「もう修正?」

やけに早いなと受け取れば、そういうことじゃないらしい。

「編集部の人が気づいてくれたの。よかったわ、クライアントまでいってなくて」

「え、あたし何かやらかした?」

なんとなく嫌な予感がして、彼女と一緒にのぞきこむ。
その指が指していたのは、イラストで描かれた主婦が持つ商品だった。

「これ、リニューアル前の古いヤツなの」

意図を理解して、みるみる顔が強張るのがわかった。
イラストレーターに発注したのはあたしだ。

慌てて記憶を辿り……思い出した。

発注の時商品見本のデータを一緒に送って……けどあれは仮データだった。
数日後にリニューアル後の新パッケージが届くということだったから。

あぁ、そうだ。
奈央から新しいデータをもらったのに、それをあたしがイラストレーターへ転送するのを忘れてたんだ!

「ごめんっあたしのミスだ、あたしがイラストレーターに伝えてなかったからっ……」

「ううん、言ったでしょ、わたしのチェック不足だって」

「ごめん、今すぐ再発注するからっ。もう少し待っててもらえる?」
早急に新しいイラストを仕上げてもらわなきゃ。売れっ子さんだからな、1点とはいえ、今日中にやってもらえるかどうか……

「大丈夫、先方にはもう伝えてあるから。でも、ねえ翠、なんか最近――」
「ほんとにごめんねっ」

再発注のことで頭が一杯になっていたあたしは、奈央の話はろくに聞かずに、さっそく電話に飛びついた。

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