謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
数拍遅れて、ようやく最後の質問があたしに向けられたものだと気づき、あわあわと口を開く。
「え、あの――た、助ける、って?」
「三千万、オレが出してもいいって言ってるんだ。そうすれば、妹さんの借金はチャラ。君は、別店舗とやらに行かずに済む」
え?
え、ええええ?
あたし、耳がおかしくなったんじゃないよね。
三千万、出してもいい!?
驚きの余り口をパクパクさせるあたしと、イケメンとを交互に見て、黒沼が眉をひそめる。
「なんだ、あんたこの女の知り合いなのか?」
「いや、今日が『初めまして』だけど?」
「はぁっ? 初対面だと!? それで金を出すって言うのか、そんなふざけた話――」
「さて、どうする? 助けてほしい?」
強面の黒沼が凄んでも、このイケメンには通じないらしい。
雑音など気にならない、とばかり、楽し気に双眸を煌かせてあたしをじっと見つめてくる。
こんな時じゃなければ、きっとトキめいていたに違いない。
それくらい、その美しい眼差しは真っすぐ、あたしに向けられていたから。
……い、いやいや、しっかりしなさい翠。
男にヨロめいてる場合じゃないのよ。
大体、そんなうまい話が早々そこらに転がってるわけ――……
「ほ、ほんとに、お金……貸していただけるんですか?」
藁にも縋る思いで聞いてしまう自分がカナシイ。
「いや、貸さない」
へ?
「え? あの、それじゃ――」
「貸すんじゃない。オレが君に払うんだ、三千万。返す必要はない」
返す必要が、ない??
「え、え、っと……」
「もちろん相応の対価をもらう――君だ」
一息にサラリと告げられた内容に、思考回路が一瞬バグって白くなる。
対価? は?
「あ、あたしっ?」
「そう。君がオレのものになると約束するなら、助けてやる」