謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
落ち着け。
落ち着け。
とにかく早く大通りに出よう。
本当の本当は、気のせいかもしれないし!
足を止めないまま、スマホへ目を落とす。
地図を拡大したいのに、手が震えてなかなかできない。
ええと、このまま真っすぐ行って、それから右、……大丈夫、たぶん、そんなに距離はない。
あたしは少しずつ歩調をさらに上げる。
コツコツコツ……
コツンコツンコツンッ……
足音はどこまでも同じペースでついてくる。
最悪。
寄り道なんてしないで、さっさと帰ればよかった!
コツコツコツ……
コツンコツンコツンッ……
やだやだやだっ怖い!
足音に追い立てられるように、あたしはいつの間にか駆け出していた。
「はぁ、はぁ、はぁっ……」
ローヒールとは言え、パンプスでの全力疾走はかなりキツイ。
でも絶対足を止めちゃダメ!
あと少し、あと少しで大通りだからっ――
10メートル、5メートル、3メートル……
「相馬っ!」
「きゃあっ」
腕を掴まれ、思わず叫んだあたしは――数秒後、「あれ」と間抜けな声を漏らしていた。
「……田所?」