謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

――いいじゃないですかぁ。フリーなんでしょ、相馬さん。失恋の特効薬は、新しい恋ですよっ。

ぼんやり思い出したのは、合コンの時の加藤ちゃんの言葉。
まさかあの子、田所の想いを知ってて共同戦線張った、とかじゃないでしょうね?

頭を掠めた疑惑に顔をしかめるあたしの前で、田所の手がテーブル上のスマホに伸びた。

「さっさと警察通報して、はっきりさせようぜ。相手の素性はわかってるんだし、逃げられる心配はないんだろ? 相馬が言えないなら、おれが言ってやるよ」

そのまま画面を操作しようとするから、「ちょ、ちょっと待ってよ」って焦って腰が浮いてしまった。
そんなあたしを、田所が眇め見る。

「どうしたんだよ。うじうじ悩んでビビッて、いつものお前らしくねえな。いつものお前なら、さっさと白黒つけようって、考えるより前に行動してるだろ」

真正面から指摘されて、こっちはぐうの音も出ない。

浮かせた腰を下ろし、しおしおと肩を落とす。

彼の言う通りだ。
こんなの、いつものあたしらしくない。

いつの間にこんなに弱く、臆病になっていたんだろう。

それもこれも、原因はキョウへの想い。
それが真相を知りたいって気持ちにストップをかけてる。

ただ、ズルズルこのままの状態を続けてていいはずはない。

目を背けてたって、事実が変わるわけじゃないし。
実際仕事にも影響が出始めてるんだもの、なんとかしなきゃ。

ショックを受けるようなことが判明するかもしれないけど、それならそれで、ちゃんと向き合わなくちゃいけないよね。

いつまでも前に進めなくなっちゃう。

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