謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

駅からキョウのマンションへの行き方については、正直かなり不安があった。
花火大会の時は会場から姫抱っこだし、帰りは車で送ってもらったしな。

それでもスマホのマップと記憶を頼りにたどっていくと、なんとなく見覚えのあるビルが見えてきた。
細長くて、隣の敷地に駐車場があって……たぶん、あれだよね?

前回は裏口から入ったせいだろう。
一瞬の戸惑いはあったものの、幸い場所は間違ってなかったみたい。

さて、オートロックをどう突破しようか。

できればいろいろ小細工できないように、いきなり玄関前まで突撃したい。
誰か住民が帰ってくるのを待って、後ろからついて行く、って方法くらいしか思いつかないな。上手くいくといいけど……と正面付近をうろつけば、なんとガラスドアに“オートロック故障中”の貼り紙があるじゃない。

え、めちゃくちゃツイてる!
これはきっと、ここから入りなさい、って神様が言ってくれてるのね。

「よし」と気合を入れてエントランスの短い階段を上ったあたしは、そのままドアの中へ入って行く。
と、そこへ。

パタパタと軽やかな足音が近づいてきた。
静かな夜の住宅街でよく響くそれは、まさにあたしがさっき上った階段を迷うことなく上ってくる。ここの住民らしい。

慌てて、ズラリと並んだ郵便ポストをチェックしてるふり。
背後を、誰かが通り過ぎていく気配がする。

こんな都心に住めるなんて一体どういう人だろう、と野次馬根性で何気なく肩越しにチラリと振り返って――ドクンッ、と大きく跳ねる鼓動を感じた。


ピンク色の髪が見えたから。

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