謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
ピンポーン……
部屋の前に立ったあたしは、考えるより先にインターフォンを押した。
さもないと、今すぐエレベーターへ駆け戻ってしまいたくなりそうだったから。
出てくるのはキョウか、それとも藍か。
どちらが出て来るにせよ、取り乱さずにいられるか、自信はない。
ないどころか、すでにぐらぐら揺れている。
落ち着いて。
落ち着いて!
ドクンドクンドクン……
気の遠くなるような時間――けれどおそらく数秒間――が過ぎた。
微かにパタパタという足音と、「はいはーい」というソプラノがドアの向こうから聞こえる。
つまり、出てくるのは藍ということだ。
ゴクリと喉が鳴る。
思った通り――
ガチャリと開いたドアの向こうからピンク色の頭が現れた。
途端、頭にカッと血が上る。
十分覚悟はしてたはずなのに、胸の内に吹き荒れるブリザードは止められなかった。
「藍っ! 今まで一体どれだけ心配したと思って――…………」
開口一番、勢いよくまくしたてたあたしだったけれど、すぐさま勢いが削がれ、尻すぼみに声が消えていく。何かがおかしい。
……え?
ん??
穴が開くほどじいいっと見つめる先、ピンク色の姫カットヘアの女の子は、髪型はもちろん、身長や体型、メイクも、藍そっくり。
でも……と、混乱する頭を傾け、目をこすり、もう一度凝視する。
いや、何度見ても間違いない。
その子は――藍じゃなかったのよ!!