謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

ピンポーン……

部屋の前に立ったあたしは、考えるより先にインターフォンを押した。
さもないと、今すぐエレベーターへ駆け戻ってしまいたくなりそうだったから。

出てくるのはキョウか、それとも藍か。

どちらが出て来るにせよ、取り乱さずにいられるか、自信はない。
ないどころか、すでにぐらぐら揺れている。

落ち着いて。
落ち着いて!

ドクンドクンドクン……


気の遠くなるような時間――けれどおそらく数秒間――が過ぎた。


微かにパタパタという足音と、「はいはーい」というソプラノがドアの向こうから聞こえる。
つまり、出てくるのは藍ということだ。

ゴクリと喉が鳴る。

思った通り――


ガチャリと開いたドアの向こうからピンク色の頭が現れた。

途端、頭にカッと血が上る。
十分覚悟はしてたはずなのに、胸の内に吹き荒れるブリザードは止められなかった。


「藍っ! 今まで一体どれだけ心配したと思って――…………」



開口一番、勢いよくまくしたてたあたしだったけれど、すぐさま勢いが削がれ、尻すぼみに声が消えていく。何かがおかしい。



……え?

ん??


穴が開くほどじいいっと見つめる先、ピンク色の姫カットヘアの女の子は、髪型はもちろん、身長や体型、メイクも、藍そっくり。


でも……と、混乱する頭を傾け、目をこすり、もう一度凝視する。
いや、何度見ても間違いない。


その子は――藍じゃなかったのよ!!

< 159 / 246 >

この作品をシェア

pagetop