謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

いやいや、そんなはずはないわ。
1フロア1戸だもの。
この部屋以外に、なかったでしょう玄関なんて。

じゃあ、やっぱりここがキョウの部屋ってことよね?

パンプスを両手に抱えたまま困惑しきりのあたしが、首を傾げた時だった。
ピンポーンとインターフォンの音が聞こえた。

え、お客さん?
あぁたぶん、さっき降りて行ったエレベーターで上がって来たのね。

こんな時に、なんて。ツイてない。


「はーい」

『このマンションの管理人やってる者なんですけど、この辺りで空き巣被害が続いてるみたいで。警察から住民の方に防犯指導するようにってお達しがありまして』

「あ、そうなんですねー、今開けまーす」

玄関から近いせいか、2人の女性のやりとりがよく聞こえる。

「どうぞー、入ってください」
「すみませんね、こんな遅くに。昼間来たら、いらっしゃらなかったから」
「大丈夫ですよ。昼間は仕事があるんで。あ、スリッパどうぞ」

藍のそっくりさんがドアを開け、管理人の女性を中へ招き入れているのがわかった。

えーどうしよう……。
出るに出れなくなっちゃった。

2組の足音がドアの前を通り過ぎ、奥の部屋へと遠ざかっていく。

まぁ、防犯指導って言ってたし、すぐ済みそうよね?
それなら待ってればいいかな。

と、ドアに耳を近づけてみるものの、距離があいてしまったせいでくぐもった声がぼそぼそと聞こえるだけだ。

そっか、今なら気づかれずに玄関から出ていくことも――って、ダメダメ。

彼女がどうしてあたしの名前を知っていたのか、その疑問を解かなくちゃ。

そういえば、さっきは動転していて気づかなかったけど、よくよく思い返してみると彼女が着てた服は、藍の私服にすごく似てた。
確か去年、一緒に買い物に行った時にあの子が一目ぼれして、買ってたヤツ……



ガッターーーーンッッ!!!



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