謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

な、何してるのこの人っ!?

「っうぅうっ……く」

そっくりさんの苦し気なうめき声が聞こえて、ようやく最初の衝撃でフリーズしていた身体が動き出す。

「ちょ、何してるんですかっ!! 警察呼びますよ!?」

叫びながら駆け寄って、女を引きはがそうと飛びついた。

「やめなさいってば!」
「うるさいねっ! 邪魔するんじゃないよっ!!」

絶対この人、管理人じゃない。
本気で危険なヤツだ。

このままにはしておけないと、恐怖を感じる暇もなく、無我夢中で引っ張る。
全エネルギーを振り絞り、ようやく女をそっくりさんの上からどかすことに成功。ナイフも床を勢いよく滑っていったが――
「きゃあああっ!」

今度はあたしが突き飛ばされて、パーテーションへ勢いよくぶつかった。

「いったぁ……」
背中をさすりながら涙目を上げれば、唸り声を上げた女が今度はあたしへと襲い掛かってくるのが見えて、ギョッとした。

起き上がろうとしたところを引き倒されて、上にのしかかられる。

ジタバタ必死で四肢を動かし抵抗するものの、かなりの重量があり、それだけで圧迫感がすごい。

「や、やめっ……」

「あんたたち姉妹が誘惑したせいよっ! 全部全部、あんたたち姉妹のせいなのよっ!! この悪魔っ!! 疫病神!!」

あんたたち姉妹(・・・・・・・)

怨念のこもったそのワードは、間違いなくあたしを名指ししているような……
どういうこと?

怪訝に思いつつなんとか視界を動かしたあたしは、ようやくその女の顔をまともに見上げることができた。


そして今度こそ、心臓が止まってしまうんじゃないかってほど驚いた。


「あ、あなたっ……!」


それは、あたしが知っている人だったのだ。


< 163 / 246 >

この作品をシェア

pagetop