謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
10. ハッピーエンド、でいいですか?
「…………白井、さん……」
つぶやいたのとほぼ同時に、ガッと両手で首を掴まれ、呼吸が強制的に阻まれた。
「っ……かっ……は」
息苦しさに喘ぎ喘ぎその手を剥がそうと引っかきながら、見間違いかと霞む視界をこじ開ける。
「よくも! よくも! あんたの! あんたたちのっ! せいで! 優ちゃんはぁあっ!!」
醜く歪んだ顔で恨み言を連ねる女は、逆光になっているせいだろうか、その目だけが爛々と異常な光を帯び、さながら幽鬼のようだった。
普段のあの上品さは欠片もない。
でも間違いない、白井夫人だ。
どうして?
どうして優のお母さんがこんなところにいるの?
何がなんだか、どうなっているのか、さっぱりわからない。
わかっているのは、この状況は控え目に言っても命の危機だ、ということだけ。
「っく、……っ」
苦しい。
苦しい。
息が、出来ない。
お願い、誰か助けて。
嫌だ。
嫌だ、死にたくない。
そう思うのに、段々手にも足にも、力が入らなくなっていく。
なんでこんなことになるの?
死にたくない。
まだ、やりたいことがあるのに。
会いたい人が、いるのに。
キョウ……
逢いたい。
逢いたい、よ。
最後に一目でいい、逢いたかっ、……
「みどりっ!!!!」