謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
いきなり、だった。
「何するのよぉっっ!!」
夫人の悲鳴交じりの罵声が響くや否や、全身を押しつぶしていた重量感が消え、あたしは解放されていた。
「ゲホケホッ! ゴホッ!」
「翠っ!」
幻聴? 幻覚?
あまりに逢いたすぎて、夢でも見てるのかと――
「っ!!」
しなやかな腕にきつく抱きすくめられて、懐かしい爽やかなシトラスの匂いに包まれて、瞬く間に張り詰めていた緊張が解けていくのがわかった。
……あぁ、夢じゃない。
「キョ、……」
「ったく、無茶しやがって」
呆れたような乱暴なテノールとは裏腹に、背中へ回された腕は微かに震えている。
本気で心配してくれたんだ。
「っ……」
思うそばから、あたしの頬は溢れる涙で濡れていく。
「怖かったな」
「ふ、……っ、ぅん、うん、……っ、かった、こわか、っ……ぁああっ」