謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「邪魔するなよ。いいところで」

「なにそれーっっ! こんなに頑張ってあんたの恋路応援してやったのに!!」

「はいはい。感謝シテマス」
「心がこもってないっ!」

キョウと軽口をたたき合う相手――あ、この声藍のそっくりさんだ、って気づいたあたしは慌ててキョウ越しに身を乗り出す。
すると、床に座り込んだ彼女が笑顔で手を振って来た。

「翠ちゃーん、助けてくれてありがとね」

「あ、いえ――」

同い年くらい、だろうか。一体何者? との疑問はさておき、お互い無事でよかったですね、と続けようとして、はたと口を噤む。

彼女の横に、さっきまではいなかった別の男性の姿が見えたからだ。
キョウと同じタイミングで入って来たらしいスーツ姿のその人が、まだ暴れる白井夫人を床へねじ伏せている。

キョウの知り合いかな、と見つめる視線を察したのか、ちょうど彼が顔を上げた。

京吾(きょうご)、華はともかく、相馬さん病院で診てもらった方がいいんじゃないか?」
「あぁ、そうするつもりだ。警察が到着したら、後の対応は篤史と華に任せていいか?」
「もちろん」

「ちょっと篤史! 私はともかく、ってどういうこと!?」
「そのまんまだね。見たところ何も問題なさそうだ」
「ちょっとは労わりなさいよーっ!」

キョウたちと親し気に言葉を交わす男性の、その麗しいうりざね顔を見たあたしは、思わずあんぐりと、ギャグみたいに口を開けてしまった。

藍が好きそうな言葉を借りるなら、もはや異世界転移レベルのパニックよ。
だって、その人は――……


「な、中里さんっ!?」


あわあわ、と上手く回らない口を懸命に動かすあたしへ、「はい、お久しぶりです」、と悪戯っぽく微笑んだイケメン。
間違いない。トワズの広報、中里篤史さんだっ。

中里さんが、キョウと知り合い?
しかも、名前呼びするくらいの仲?

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