謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「ちょっと待った!!」
まとまりかけた話に無理やり割り込んできたのは、黒沼だ。
「勝手に話を決めないでもらおうか。決めるのは俺だ。お兄さん、随分キレーな顔してるが、ここら辺じゃ見ないツラだな。歌舞伎町あたりの人間か? 俺は初対面のヤツを信用できない性質でね。まして金が絡む話には」
胡散臭そうに眇めた目でイケメンを睨み、首を振る。
「あんたとは取引しない。引っ込んでいてもらおう」
えぇえええ?
「ほらあんた、向こうでもう一度話すぞ」
伸びてきた太い指に腕を掴まれ、強引に立ち上がらされる。
「ちょ、ちょっ――あの」
縋るような気持ちで振り返るが、イケメンは面白そうに眺めてるだけ。
なんでそんな余裕なの!?
助けるって言ったのは気の迷いで、やっぱりあたしがどうなろうと関係ないってこと?
有無を言わさず引きずられながら、一瞬でも本気にしてしまった自分が悔しくて、ぎゅっと唇を噛んだ――その時だ。
「オーナーっ」
焦った様子で駆け寄ってきたのは、上品な和服姿の中年女性。
格好からして、このお店のママだろうか。
「なんだ、今は取り込み中だ!」
「申し訳ありません。あの、でもこちらの方……」
黒沼に近づき、その耳元に何かを囁いてる。
2人の視線はあのイケメンへと向けられていて、どうやら彼について話してるらしいって伝わってくる。
「……なんだと、リュウのダチぃ?」
傍にいたおかげで、黒沼がつぶやいたその言葉だけは聞き取れた。
意味はさっぱりわからなかったけど。
「っくそ、面倒くせぇことになったな」
盛大な舌打ちとともに、黒沼の両目が忌々し気にギラつく。