謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
……え?
今、なんて……?
完全に思考停止して硬直するあたしの耳元へ、彼が唇を寄せる。
「翠が好きだよ。愛してる」
「う、嘘」
「嘘じゃない。翠と出会ってからは、翠だけだ。恋人もセフレも、一人もいない」
「だだって、キョウ言ってたじゃない。『うちは、いろんな女の子が出入りするから、鉢合わせしちゃったら翠も気まずいだろ』って」
たちまち、「あー……それな」と顔をしかめるキョウ。
「それは、白井の母親が相馬藍をストーキングしてるって証拠を掴むために、このビルを使ったからだ。そこに翠が現れて白井の母親と鉢合わせしたら、計画が台無しになるかもしれないだろ?」
あぁ……そうか。
あたしをここから遠ざけるためにあんなことを言った、ってことね?
自分のためだったと知り、胸がきゅっと甘酸っぱく疼いた。
彼の言葉を信じたいって方へ、気持ちがグラリと傾いていく。
あたしも。
彼が好き。
ずっとずっと一緒にいたい。
その気持ちは間違いなくて。
この幸福感に浸ってしまいたい気持ちは、確かにある、のだけれど……。
――なんだか面白そうなことやってんな。
――助けてほしい?
――そう。オレさ、モテるんだ。ものすごく。
――オレだって気持ちいいことは嫌いじゃないから、誘われればお相手してきたけどね。
――あぁ期間か。うーん……オレが飽きるまで、かな?