謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
今度こそ間違いなく、そこはキョウの部屋だった。
モルタル風の壁に囲まれた1Rの空間は、相変わらず限られたシンプルな家具しか置かれてなくて。
それは変わっていない。
ただ、そこは確かに“散らかって”いた。
床が、大量の白いもので埋め尽くされていて、足の踏み場もなかったのだ。
なにこれ……え、紙!?
「だから言っただろ、散らかってるって」
若干気まずげに肩をすくめたキョウが、バサバサとA4サイズ程度のその紙をかき集めていく。
「い、一体何があったわけ?」
同じように膝をついたあたしも1枚手に取ってみると、色鉛筆で丁寧に描いたらしいカラーイラストが確認できた。これは――
「……ゆびわ?」
これも、あれも……みんなそう。
全部、指輪のデザイン画だ。
10や20じゃない。100とか200とか、超えていそうな……。
華美すぎない、けれどさりげないエレガントさが光るデザインはどれもあたし好みで、束の間今までのやり取りを脇へ置き、魅入ってしまった。
「わぁ、星型のダイヤ? こっちはバラね、素敵」
モチーフが一つ一つ違うし、フォルムや太さ、石の種類や数も、一つとして同じものがない。
そしてよくよく見ると、指輪の周りに細かな書き込みがある。
“ダイヤモンド-永遠の絆”、“オパール-幸運、希望”、“アイビー-永遠”“四葉のクローバー-真実の愛”“波-永遠の愛”“ハート-幸せな結婚”etc.……
石言葉や、花言葉、モチーフに込められた意味、だろうか。
知らなかった。ひとつの指輪にこんなたくさんの意味を持たせることができるなんて。
「本当は完成形を渡すはずで……なのに結局間に合わなかったとか。カッコ悪くてすまない」
「これ……まさか全部、キョウが?」
恐る恐る尋ねると、「あぁ」とあっさり肯定が返ってきて腰を抜かすかと思った。
どう見ても素人のデザインじゃないんですけど!?
聞けば、なんと今までも高橋さんたちから頼まれてトワズの商品デザインに何度か協力していて。つまり経験はあったらしい。