謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
少し照れながら口にすると、くしゃりと目尻を下げた彼があたしの手を掴み、その瞳へとろりと甘さを滲ませる。
そして、ゆっくり頬を傾けてきた。
「みどり……」
人の気持ちは変わるものだ。
今愛し合っていても、数年後はどうなるかわからない。
優だって、藍と浮気してた。
キョウがそうならないという保証はない。
それでも、この人を逃がしたら一生後悔する。
直感がそう告げている。
だから、あたしは逃げない。
彼のすべてを受け入れる。
心を決めて、近づいてくる整った顔を見つめながら瞼を下ろしていく――
が、そこで。
「あ、ちょっと待って」
あと数センチでキス、というところで、ガバッと彼の口を手で塞いだ。
「え? 翠?」
不満げな眼差しに責められるが、最初にこれだけははっきりさせておかなきゃ。
「一つだけ約束して。もうご家族から援助してもらうのはナシにするって」
お堅いって思われるかもしれないけど、親しき中にも礼儀あり。借金はやっぱりしたくないし、お金が介在して遠慮する関係にはなりたくないから。
「あー……ええと、それも実は――」
「心配しなくても大丈夫。任せて、その分あたしが頑張って働くから」
何か言いかけた彼を遮って宣言すると、「オレは働かなくていいって?」と異世界人を見るような目で見られた。
「んー……働かなくていい、って言っちゃうといろいろ違う気がするけど……」
あたしは仕事が好きだし、今の会社ならいろんな手当も充実してるから、扶養家族が増えてもやっていける気がするのよね。
「無理やり好きでもないことをするくらいなら、キョウが専業主夫でも構わないわよ?」
もちろん専業主夫だって簡単じゃないけどね、と念を押すと、「ぶはっ」て楽し気にキョウが吹き出した。
「あはははっ……翠ってほんと、男前だな!」