謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「それ、褒めてるの?」
「めちゃくちゃ褒めてるよ。さすがオレの惚れた女」
ぎゅうっと抱きしめられて、それから唇、額や頬へ、バードキスが降り注ぐ。
そのくすぐったさに身をすくめながらも、あたしはその合間に「ただし」と再度釘をさした。
「何か夢中になれることは、探してほしいかな。例えば――アクセサリーのデザインとか?」
言うや否や、瞠目したキョウが「あーくそっ……音が聞こえる」と嘆息しながら天井を見上げた。
「お、音?」
「ずぶずぶって、翠沼にハマっていく音」
「ふふっ翠沼って――きゃあっ」
いきなりぐるんと視界が反転し、後頭部を抱えられつつ床に押し倒された。
「もう我慢できない。翠の事、たくさん愛したい――いいか?」
獰猛な目を見れば、容易に予感できる。
いいよと言った瞬間に襲い掛かられて、夜が明けるまで一歩もベッドから出してもらえなくなるだろうなってこと。
それでも構わない。
むしろあたしも、愛されたい。
会えなかった分までたくさん触れたいし、触れてほしい。
そんなはしたないことを考えてしまう自分に心臓をバクつかせて赤面しながら、上目遣いに彼を見上げた。
「そ、その前に、シャワーだけ浴びさせて? たくさん汗かいちゃったから、その――ぅきゃっ!」
再びぐるんと視界が動く。
気づいた時には子どもみたいに抱き上げられていた。
「ちょ、キョウっ!?」
「ったく、その目は反則だって……一緒に入ろう。そうすれば、時間を無駄にせずに済む」
えぇええ?
そうくる!?
あたしの身体をがっちりと抱え、ものすごい勢いでバスルームへと進む足取りに躊躇はなく、今更ダメだとは言えない雰囲気。
あ、あたし……明日歩けるかな?
若干の心配は、けれど瞬く間に、求められ愛される喜びに塗り替えられていく。
結局あたしも、キョウのことが好きでたまらないんだ。
たどり着いたたった一つの確かな想いを胸に、あたしは笑いながら彼へと身を委ねたのだった。