謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
11. キョウside それは運命の出会いだった。
◆
パンッ――
軽く小気味いい破裂音が耳元で鳴り、続けて頬が熱くなった。
あーさすがにクリーンヒットされると、地味に痛い。
「わたしがいるのに他の女と寝るとか、サイテーっ!」
「……君一人って、誓った覚えはないけど?」
自分の頬に手をやって不愛想に言うと、相手の女はますます両目を吊り上げた。
「もういいわよっ男のくせにニートなんて、こっちから願い下げ! ちょっとカオがいいから相手してあげたのに、調子に乗んないでよね!」
ジェンダーバイアス、職業差別、外見至上主義……と、いくつかのワードが浮かんだが、それを口にする前に、彼女はぐるんと踵を返し、猛然と去っていった。
往来にただ一人残されたオレは、周囲の気まずそうな視線を浴びつつもホッと安堵の息を吐く。
束縛が激しい子だったから、もう切ろうと思っていたところだったのだ。
泥沼の展開になるよりは、頬を差し出して終わるなら、その方がいい。
平和だ。
「次は、カオだけで男選ぶなよー」
小さくなっていく後ろ姿につぶやいて、言っても無駄かと、苦笑する。
ああいうタイプは懲りないからな。
次もまた、同じことを繰り返すんだろう。
そしてオレもまた、“たった一人”を求めて、虚しいセックスを繰り返す――
「しかし……ってぇな」
伸ばした爪が当たったようで、ヒリヒリする。
どこかで氷でももらって冷やそうかと、オレは目についた喫茶店へ足を向けた。