謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
どうしたんだろう。
イケメンさんの素性がわかったんだろうか。
結構な大物だったとか?
どうやらあたしの予想は当たっていたらしい、とすぐに判明した。
黒沼が渋々、といった様子であたしの腕を放したからだ。
「……まぁいい。こっちは金さえ回収できりゃ文句はない」
「よかった。交渉成立」
にこっと無邪気に口元を綻ばせたイケメンが立ち上がり、近づいてくる。
至近距離で見ると、本当に完璧な美貌だ。
しかも、背、高っ! 180以上あるよね?
プロのモデルだと言われても信じてしまいそう。
ほんとにこんな人が、あたしを……?
やっぱり騙されてるんじゃ、と考えている間に流れるように片手を取られ、そのまま気取った仕草で甲に口づけられた。
「っ!」
慣れない展開に、ビクッと大きく肩が跳ねる。
日本人なのに、なんでこんなキザな動作が絵になるのっ!
イケメンコワイ!
いたたまれず、すぐ手を引き抜こうとするあたし。
ところが彼はなかなか放してくれない。どころか、さらに強く握られ、ひたと見つめてくる。
「…………」
その眼差しは、あたしを落ち着かなくさせた。
なぜかと聞かれても、理由なんてわからないけど。
「…………じゃあ、行こうか?」
やがて聞こえた穏やかな声。
視線が逸れたことにホッとしたあたしは慌ててこくこく頷き、手を引かれるまま歩き出す。
その時はまだ、知らなかった。
この謎めいた美貌の男との出会いが、あたしのこれからの人生を大きく変えることになるなんて――