謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
――京吾も自分のデザイン、応募してみない?
大人気のジュエリーブランド・トワズの社長でありジュエリーデザイナーである高橋華子に誘われたのは、数年前のことだった。
華と、トワズの広報担当・篤史とは、高校時代からの友人で――3人とも3人兄弟の真ん中である縁でツルんでいた――、トワズの創業時には、頼まれて資金とオフィスの提供もしていた。
トワズの経営は順調だった。
最初はオンライン販売に限っていたが、メディアを活用した篤史の広報戦略が当たって爆発的な人気を生み、数年後には直営店が入った自社ビルを構えるまでに成長する。
ブランドの急成長に伴い、自分以外のデザイナーを育てたいという華の意向で作られたシステムが、社内公募デザイン制度。社員なら誰でも自分のデザインを応募でき、採用されれば商品化が約束されるというものだ。
一応オレも名ばかりとはいえ役員なのだから資格はあると言われ、ファッション関係は嫌いじゃなかったから、じゃあ記念にと応募して。
しかしその時は、それが選ばれるなんて全く思いもしなかった。
そしてまさか、調子に乗った華や篤史にそそのかされて、その後も新しいデザインを描かされた上、メンズラインのデザイナーに選ばれてしまうとは……。
まぁそれはともかく。
今期の新作として登場した花びらモチーフのネックレスは、実はオレが初めて描いたデザインを元にしている。
応募して商品化されたのは別のものだったが、オレのラフスケッチを見た華がこれもボツにするには惜しいと後から採用してくれたのだ。
好評だと聞いていたとはいえ、8割くらいはオレを喜ばせようと華たちが話を盛っているんだろうと、聞き流していた。
――なんだかこれ見てると落ち着くって言うか、幸せな気持ちになれるのよね。
しかし実際にこうしてリアルな感想を耳にしてみると、まるで自分の存在を全肯定されたような充実感がある。
自分が素敵だな、と目を奪われた女性が褒めてくれるのだから、なおさらだ。
こんな感覚は初めてだった。
だが、悪くないな。