謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
そんな状態が何か月続いただろうか、ある時オレはふと、イヤな予感を覚えるようになる。あの男、浮気してるんじゃないだろうな、と。
遅刻癖が直らない、一緒に居る時すらスマホを見て上の空、という行為は彼女が軽んじられている証だと思ったし、何よりリアルに見てしまったのだ。後ろを通りかかった時に、彼がニヤつきながら見ていたスマホの画面を。
ハートマークが飛び交う、メッセージアプリの画面。
こいつはクロだと確信したオレは、迷うことなく行動を起こしていた。
真っ先に声をかけたのは、オレの弟・霧島侑吾。
親父の会社で専務を務める彼は、とある事情から様々な調査機関にツテを持っており、浮気調査なんかは朝飯前だ。
あまり借りを作りたくない相手ではあるが、背に腹は代えられない、と事情を説明。
すると、「あの兄さんが女性のために動くなんて!」となぜかめちゃくちゃ感激され、さっそく調べ上げてくれた。
結果は、想像以上だった。悪い意味で。
白井優、29歳。難関私立大卒業後メガバンク勤務、上司の覚えもめでたい、真面目で爽やかな好青年――というのはすべて表の顔。
実は恋人・相馬翠の他に複数の女がいた。
同じ銀行に勤める同僚、部下、取引先の社長秘書、そして――翠の妹・相馬藍。
さらにはオンラインカジノにハマっており、すでに借金まみれだという。
調査結果に目を通しながら、事実を知った時の彼女の絶望を予想し、ため息が漏れた。どんなにかショックを受けるだろう……
いや、それでもやはり、彼女は知るべきだ。
むしろ結婚前に知ることができてよかったと、いつかきっとそう思える日が来るだろうから。
彼女にはもっとふさわしい男がいるはずだ。
彼女だけを見て、彼女だけを大切に愛してくれる男――……ん?
おいおい、ちょっと待て。
なんでオレのテンションが下がってるんだ?
彼女が他の男と付き合おうが結婚しようが、こっちには関係ないはずなのに。
なんでこんなに気持ちがザラつく?
こんなの……まるで嫉妬してるみたいじゃないか。
思わず、ぶるりとかぶりを振る。
嫉妬? 嫉妬ってなんだよ。
第一、この気持ちは恋愛感情なんかじゃない。
何も知らずに騙されてる彼女が気の毒で、助けてやりたいだけでっ……
……ていうか、そんなことを考えてる場合じゃないよな。どうやって翠に真実を告げ、2人を別れさせるか――策を練り始めたところで、事件は起こった。
相馬藍が失踪したのだ。