謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
言い訳に聞こえることは承知で繰り返すが、本当に抱くつもりはなかったんだ。
オレの方はむしろ大歓迎だが、彼女が可哀そうだろう?
愛してもいない男に抱かれるなんて。
オレはただ、彼女を助けたいだけ。
あんな提案をしたのは、そうでも言わないと三千万の対価として釣り合わないと思ったからであって、飽きてしまったとか適当な理由をつけて、すぐに解放してやるつもりだった。
「え、仕事、してないってこと?」
「そ、無職。ニート」
初回のデートでは、とにかく軽薄なセレブを演じた。
彼女に好かれる必要はないのだから、徹底的に。
そうすれば、真面目な彼女も金を受け取ることへの抵抗感がかなり少なくなるだろう。
まぁ実際、8割がたは事実だしな。
「じゃあお金はどうやって……」
「実家が金持ちなんだ。数千万程度なら、両親か祖父母に頼めばすぐに出してくれる」
“はぁああ?”って心の声が駄々洩れな表情すら可愛いと思いながら、片頬を上げて見せる。
「何だよ? 社長とかじゃなくてがっかりした?」
「あは、は……、ちょっとびっくりはした、かな。も、もちろん感謝はしてるのよ? ただ、ご家族まで巻き込んで……どうしてそこまでしてくれるの?」
「あぁそれは、君に一目惚れしたから」
「そういう冗談いらないから。あたしは真剣に聞いてるの」
「真剣に、ねぇ」
少し考えたオレは、“女好きのクズニート”として、彼女が望む通りの答えを返してやった。
「都合がよかったから」
「つ、都合?」
「君とオレの間にあるのは金のやり取りだけ。借金ていう負い目がある君なら、余計な期待はせずに、自分の分をわきまえてくれるんじゃないかって思ったわけ」
「了解。わかったわ」
淡々と言いながら、呆れたような目がオレを見る。
あぁこれは間違いなく軽蔑されたな。
計画通りだ――なのにテンションは一向に上がってくれず、こっそりと吐息を漏らすオレだった。