謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
2. イケメンに呼び出されました。
カーテン越しに柔らかな春の日差しを感じ取って、あたしは重怠い身体をのろのろと起こした。
休みの日くらいもっとゆっくりゴロゴロしたい気持ちはやまやまだが、これ以上横になっていても眠れないだろうってことはわかっていたから。
「一睡もできなかった……」
締め切り直前の完徹は何度も経験あるけど、自分のベッドで一晩中眠れなかったのは初めてだ。
昨夜自分の身に起きた出来事が、ぐるぐると悪夢のように脳裏を過る。
いっそ、本当に全部悪い夢だったんじゃないかと……
「……なわけない、か」
枕元のスマホを操作すれば、アドレスには確かにあのイケメンの名前が登録されている。
「キョウ、か。フルネーム教えてくれないところが……また怪しいよねぇ」
タクシーでマンションまで送ってくれて、その別れ際に連絡先を交換した時のやりとりが蘇る。
――妹さんの失踪、警察に届けるのはちょっと待ってて。オレの方で探してみるから。
そういう調査の得意な知り合いがいるらしい。
たぶん、探偵とか興信所とか、そういう感じだと思う。
どうせ警察は何もしてくれないんだし、あたし一人じゃ何もできないんだし、とあの時は頷いたけど……。
時間が経ってから考えてみると、彼のことを一体どこまで信用していいのか、って疑問は依然残ってる。
モタモタしてる間に、もし藍が思いつめて妙な真似をしたら?
手遅れになっちゃったら?
やっぱり、警察に一度相談だけでも……逡巡しながらスマホを操作しかけた指先が、ピタッと止まった。
「うそっ既読がついてる!」