謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
あの夜、オレが彼女に最終的に無茶を強いなかったのは、ただただ偶然が重なった上のラッキーだった。
翠が先にシャワーを浴びたり、オレが彼女の髪をドライヤーで乾かしてやったりとベッドインまでに時間がかかったため、結果的に理性を再び取り戻すことができたのだ。
お預けを食らって確かに残念な気持ちはあるものの、寝落ちした翠をベッドへ運ぶオレの気分は悪くなかった。
――オレみたいな、クズニートでも?
――ふふ、キョウはクズじゃないでしょ。あたしを、助けてくれたじゃない。優しくて、強くて、だから……クズなんかじゃ、……
好きだと言われたわけじゃない。
けれど、どうやら彼女の中で、オレは最低のクズ男から脱しているようだと伝わってきて、たったそれだけのことに浮き立つ気持ちを抑えられない。
一体どうしたんだ?
誰にどう思われようが、今まで何も気にならなかったのに……
自分自身の変化を不思議に思いつつ、ベッドへ寝かせた彼女を未練たっぷりに眺める。
「……はぁ色気ヤバ。これは、マズいな……」
まるで食べてくれと言わんばかりに赤く色づく唇を見つめていると、ゴクリ、と喉が鳴った。
あぁくそっ……キスしたい……!
「ったく、このオレに我慢させるなんて、翠くらいだぞ? だから、これくらいは許せよな」
襲い掛かりたくなる自分を懸命に宥め、キスマークだけで我慢したオレは、これ以上の長居は危険、と急いで部屋から立ち去った。