謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「そうよね、翠さんは優にゾッコンだったもの。自分と別れてすぐに新しい、しかも自分以上のお相手を見つけるなんて、許せないわよね」
ゾッコン? は?
ないだろ、あんなクズ男に。
「あなたたちほんとにお似合いだったものー。そういえば翠さん、ちょっと痩せたんじゃない? 顔色もよくないわ。優と別れたショックのせいね?」
お似合い? 適当なこと言ってんな。
ふつふつと湧く怒りを感じる一方で、嫌な予感も過る。
なぜ彼女ははっきり否定しないんだ?
まさかまだ白井に未練があるなんてこと、ないよな?
オレとのセックス、気に入ってくれてるんじゃないのか?
毎回、あんなに乱れてくれるのに――……いや、わからないぞ。
痘痕も靨って言葉もある。
複数の女性と同時進行で恋愛できるくらいだから、あのクズにもそれなりの魅力はあるんだろうし。
無理やり別れさせられて、納得してないってことはあるかも。
胸の内を覆うモヤモヤした黒い気持ちは一向に晴れず、その日のセックスではいつも以上に彼女を啼かせ、攻め立ててしまった。
その日を境に、オレは彼女に対して遠慮することを止めた。
具体的に言えば、会う回数を増やしたのだ。
スマホを手に入れるために、今後白井自身が翠に接触してくる可能性も十分にある。
ここで彼女の気持ちをオレが掴めなければ、あのクズ男にそそのかされてヨリを戻してしまうかもしれない。
それだけはなんとしても阻止したい。
よそ見なんかさせるものか。
もっともっと、オレに溺れればいい。
オレだけを見て、オレにだけ身体を開いて――……どす黒い欲望を持て余しながら、オレはもう気づき始めていた。
激しい独占欲と嫉妬の根底にある、動かしがたい彼女への想いに。