謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
夜明け前、はたと我に返った後の後悔は、凄まじかった。
控え目に言っても、不同意性交というヤツだろう。
――オレに抱かれるのは嫌なんじゃないのか? この身体は悦んでるように見えるが、オレの気のせいかな?
――気になる奴でもできたか? 他に、抱かれたいと思うような男。
――三千万、代わりに払ってくれそうな男なのか?
――残念だったな。もうこの身体は、オレのもの。オレなしじゃいられない身体だ。諦めるしかないな。
嫉妬に塗れた醜い自分の声が耳の奥に残ってる。
最悪だ。
「ほんとごめん。跡が残っちゃったな。痛む、か?」
意識を取り戻した彼女に速攻謝ると、「ううん、大丈夫」と笑みが返ってきてホッと安堵する。
それで許されたとは思ってないが、昨夜のような拒絶は感じられなかったから。
他に好きな男が、というのはオレの嫉妬が作り出した幻だったのかもしれない、と都合よく考えてしまうくらいには、彼女の態度は自然で――……いや、待てよ。
だとすると、昨夜の行為がますますヤバかった、ってことになる。
……マジか。
「こんなに自分が嫉妬深い男だったなんて、知らなかった」
情けなさすぎる失態で、相当弱気になっていたんだろう。
「やっぱりああいうヤツ――普通にスーツ着て、ちゃんと昼間の仕事してるサラリーマンの方が、女子は好きなんだろ?」
思わず漏らしてしまった本音に、翠の目がきょとっと開く。
「キョウも似合うと思うよ? スーツ」
「……いや、似合う似合わないってことじゃ……」
「わかってるわよ、キョウの言いたい事くらい。でも、その程度のことよ。外見とかスペックなんて。スーツ着てるから、昼間の仕事してるから、イコール完全無欠人間、ってもんでもないでしょ? 大事なのは中身なんだから」