謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

その日はずっとイチャイチャして過ごして、オレとしては大満足の一日だった。
翠もすっかり心を許してくれているように見え、幸せ気分で舞い上がって。

だからすっかり頭の隅に追いやっていたのだ。
藍と白井母のトラブルのことを。

「じゃあな、また連絡――」
「キョウ!」

「ん?」

「またキョウの部屋行ってもいい? 手料理ご馳走する。あそこのキッチン、うちのより広くて使いやすそうだったから、2人で一緒にお料理しても楽しいし」

部屋の前まで翠を送り、別れ際に言われたセリフにギクリとした。

ちょうどその数日前、今回の件の協力者である華や篤史、侑吾と話し合った内容を思い出したのだ。

――順調にスマホの解析は進んでいます。これを公にすれば、間違いなくこの男は逮捕されるでしょうね。

侑吾の言葉に懸念を示したのは華だった。

――母親の方は泳がせたままでいいの? 息子に警察の手が伸びそうだってことはわかってるでしょうし、闇バイトまで雇った女だから何をするかわからないわよ。

ならばこちらから先に動こう、とオレたちは決め――

――どうせなら、母親からも息子の罪を決定づけるような証言が引き出せればいいんじゃないか?

篤史の一言で、母親をオレのマンションにおびき寄せ、罠に嵌めることになったのだ。
つまり、この先しばらく、あのマンションに翠がやってくるのは非常に具合が悪い。

あんなに甘い時間を過ごした後で、“家に来るな”というのは言いづらいが……。
かといって、じゃあ、どう言えばいいんだ?

「えぇと……うちは、いろんな女の子が出入りするから、鉢合わせしちゃったら翠も気まずいだろ?」

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