謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

とっさに口を突いて出たのは、最低の言い訳。
言い終えるなり後悔が押し寄せたけれど、別の言葉を用意するより早く「わかった」と返事が返ってきてしまった。

「変な事言ってごめん。家には行かないから安心して。じゃあ、送ってくれてありがと。おやすみなさい」

そして血の気の引いたカオでそれだけ言って、部屋へ入ってしまう。
あー……しまった。

その場に座り込みたくなる気持ちと懸命に戦う。
何やってんだよ、オレ……絶対彼女、誤解した。呆れたよな。

なんとか「ごめん」とだけ謝ってその場を後にしたものの、心の中はブリザードが吹き荒れていた。

あんな風に他の女とも関係があると匂わせた後で、好きだと告白なんかして、果たして彼女が本気にしてくれるだろうか?
くそっ……カッコつけたりせず、さっさと気持ちだけ先に伝えておくんだった。

こうなったら、とっとと藍の件を片づけて、すべてを正直に打ち明けるしかない。

前倒しに罠を仕掛けることを相談すると、華たちも了承してくれ、オレたちは動き出す。

藍に扮した華は、これまで白井母の尾行をまいていたが、計画に沿ってオレのマンションへ帰宅(・・)
何度かそれを繰り返して、敵にそこを藍の隠れ家だと確信させた。

さらに、オレは“藍の男友達”役を演じ、華と連れ立って出歩く。
その先で、「スマホはできるだけ早く警察に提出した方がいい」というアドバイスを尾行中の白井母に聞かせ、不安と焦りを煽る。

いよいよ追い詰められてきたんだろう。
えげつない内容の脅迫状がマンションの全ポストに入るようになり、オレたちは計画通りだとほくそ笑んだ。

そろそろリアルに接触を図ってきそうだなとわかると、舞台となる6階フロアの部屋(トワズ旧オフィス)へ監視カメラを死角のないように設置。
華が白井母から話を聞き出す様子を、音声も含めてすべて記録する予定だ。

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