謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
ネックレスやピアス、ブレスレット……翠を想い、翠に似合いそうな、喜びそうなアクセサリーのデザインを紙の上に思いっきり描き出す。
その時だけは、かろうじて心を穏やかに保つことができた。
芸術の創作活動に癒しを見出すアートセラピーという言葉があるが、似たような感覚なのかもしれない。
今までこんなに熱心に考えたことがあるだろうか、というくらい、オレは集中して作品を仕上げていった。
そんなある日のこと。
夢を見た。
翠が、寝ているオレを起こしに来る夢だ。
――お寝坊さん、朝ご飯できたよ。一緒に食べよう?
白く清涼な光に照らされた彼女が、柔らかな笑みを浮かべてオレを見下ろしている。その笑顔には一片の緊張や遠慮もない。
他愛もない日常の一コマのように、リラックスして見える。
――あはは、寝ぐせついてるよ。なんかカワイイ。
オレの髪に伸びた彼女の手に、キラリと光る指輪が見えた。
あぁ、そうか。オレは翠と……
あまりの多幸感に思わず泣きそうになったところで、目が覚めた。
「夢、か……」
未だ幸せの余韻が残っている気がする指で髪をかき上げ、上半身を起こす。
ぼんやりと考えたのは、夢の中で彼女がつけていた指輪のことだ。
彼女の白く細い指に、誂えたように似合っていて……
あれは、どんなフォルムだっただろう?
どんな石がついていた?
考え始めるともう止まらない。
ものすごい勢いでデザインを起こし始めた時には、すでにわかっていた。
この指輪は、エンゲージリングになるのだと。