謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
ところが数日後、思いがけないことが起こる。
『マズいわ、翠さんが部屋の前に来てる』
7階の自宅で指輪のデザインに色をつけていたオレは、インカムから流れてきた華の声で慌ててパソコンへ駆け寄った。
防犯カメラの映像を確認すると、確かになぜかエレベーターホールに翠の姿がある。
6階にいるということは……おそらく、返事を寄越さないオレに業を煮やして直撃しようとやってきて、そこで藍に扮した華を見かけ、追って来たんだろう。
さてどうするか。
『もうこれは全部正直に打ち明けるしかないわね。きっと彼女、あなたと自分の妹がデキてるってカン違いしてるわよ』
そう言って、華は翠を部屋に入れた。
確かに、駅での出来事もあるし、間違いなく誤解されてるだろうな。
ここはオレも説明に行くべきだろう、と腰を上げかけた時だった。
事態は予測不能な方向へと転がり始める。
『白井寿美子がマンションに入っていくぞ』
白井母を見張っていた篤史から報告を受け、緊張が走った。
なんなんだ、この最悪のタイミングは。
舌打ちしながら、華と翠とのやりとりに耳をすます。
『これ持って、この中で大人しくしてて。何があっても出てきちゃダメよ。いいわね?』
どうやら彼女をトイレへ隠し、白井母を出迎えることにしたようだ。
『京吾、篤史、聞こえてる? このまま計画は続行で行きましょ』
「いや、せめて翠を7階にっ……」
『時間がないわ。ようやく念願のチャンスが来たんじゃない。大丈夫、部屋の中で話をするだけだから、トイレから出ない限り翠さんは安全。いい? 絶対こっちに来ちゃダメよ。私が上手くやるから』
反論する間もなく、インターフォンの音。
白井母だ。くそっ……もう止められないじゃないか。