謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
『はーい』
『このマンションの管理人やってる者なんですけど、この辺りで空き巣被害が続いてるみたいで。警察から住民の方に防犯指導するようにってお達しがありまして』
『あ、そうなんですねー、今開けまーす』
さすが華。
平然と出迎える肝の据わった対応に舌を巻いていると、2人は廊下を通って室内へ移動していく。
『あら、なんだか会社のオフィスみたいなお部屋ね』
『ええと、あはは、ちょっと家に帰れなくて友達から場所を借りてて』
『そうでしょうね、あなたが泥棒だってことはわかってますよ。だから家に帰れないんでしょう?』
『え?』
旧オフィスで応接スペースとして使っていたソファに案内したところで、気持ちが大きくなったのか、早々に相手が本性を現した。
『手間をかけさせてくれたわね。もう逃がさないわよ、相馬藍。このコソ泥っ! 優ちゃんから盗んだものを返しなさい。そうすれば、窃盗で警察に突き出すことだけは勘弁してあげるわ。返さなきゃ、今ここで110番するわよっ』
自分のスマホを見せ、顔を歪めた白井母が迫る。
まるでホラー映画のワンシーンのようだ。
しかし、華は落ち着いていた。
『……警察に連絡されて困るのは、そちらじゃないんですかぁ? 白井優のお母さま。よくもまぁ、こんな古典的でくだらない真似できますね。引くわー』
『な、なんですって!?』
気色ばむ相手の前のテーブルへ、数枚の紙をバラまく華。
それはこのマンションの全ポストに配られた脅迫状だ。
“ここにコソ泥が住んでいます”“このマンションは呪われている”“地獄の裁きが下るだろう”とかなんとか、ふざけた内容のヤツ。
ご丁寧に、華がマンションへ入っていく写真までカラーで添付されてる。
『なっ……わ、私はただっ忠告してあげようとしたのよ! 犯罪者と一緒じゃ静かに暮らせないだろうと思って!』
『わぁ、じゃこれご自分が配ったものだって、認めるんですねー?』
揶揄う様な切り返しに、一瞬相手が怯んだ。