謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
画面に目を凝らした次の瞬間。
シューーーッ
スプレー音がして、噴射された白煙が華を襲う。
『げほっごほっ……』
催涙スプレーのようなものか。
せき込んだ彼女は煙から逃れようとバランスを崩し――
ガッターーーン!
パーテーションの一つを巻き込み、派手な音とともに倒れ込んだ。
くそっ、飛び道具がダブルで来るとは思わなかった。
『きゃああっ!』
『どこかって聞いてるでしょうっ! 答えなさいっ!!』
逃げる華に白井母がナイフを振りかざす。
華の方は、まだ目がよく見えないのか、防戦一方だ。
いくら絶対来るなと言われていても、さすがにこの状況はマズい。
助けに行かなければと慌てて立ち上がり、警察も呼んだ方がいいな、とスマホへ手を伸ばす。
そこで、微かにドアの開く音が聞こえた。
嘘だろ……っ
「ダメだ、止めろ、出て来るな翠っ!!」
必死の祈りもむなしく、入口に立ち竦む翠をカメラが捉える。
翠が危ない。
頭の中が真っ白になる。
考えるより先に、スマホを投げ捨て、オレは駆け出していた。