謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
『ちょ、何してるんですかっ!! 警察呼びますよ!?』
ワイヤレスインカムから流れてくる翠の声を聞きながら、外階段を駆け下りる。
頼む、翠。逃げろ!
こんなところで正義感を発揮しなくていい。
危険なことはするな!
『やめなさいってば!』
『うるさいねっ! 邪魔するんじゃないよっ!!』
ガタンッ!
何かが倒れるような音に続いて、悲鳴――やめろ、おい、何があった!?
恐怖で潰れそうな心臓を服の上からきつく押さえて6階に着いたところで、エレベーターから降りてきた篤史と出くわした。
「篤史、警察呼んでくれ! 中の2人が危ないっ」
「了解!」
頷いた篤史を残して、オレは玄関ドアを開け放つ。
廊下を一気に駆け抜けて、室内へ。
目に飛び込んできたのは――
「よくも! よくも! あんたの! あんたたちのっ! せいで! 優ちゃんはぁあっ!!」
白井母に首を絞められる、翠の姿だった。
「みどりっ!!!!」
無我夢中で駆け寄り、馬乗りになったその女を翠から引きはがして。
「キョ、……」
「ったく、無茶しやがって」
苦し気にあえぐ彼女を、腕の中へ閉じ込める。
あぁ無事だ。よかった……本当に……。
「怖かったな」
「ふ、……っ、ぅん、うん、……っ、かった、こわか、っ……ぁああっ」
泣きじゃくる彼女を抱きしめながら、震えが止まらない自らの手に気づき、どれほど強烈な恐怖だったかを思い知る。
それは生まれて初めて体験する感情で。
改めて、彼女の存在の大きさを想う。
可愛い、愛しい人――箍が外れ、歯止めがきかなくなった愛情を注ぐように、顔中にキスを降らせた。