謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
返って来た返事は、残念ながらオレと同じ言葉じゃなかった。
嘘だろうと疑われたのだ。
女好きのクズニートってイメージは相当強固らしい。
とはいえ、すでに“好き”って言質は取ってる。
あと一押し、だよな。
「こっちだ。オレが本気だって、その証を見せる」
困惑する彼女を誘導した先は、オレの部屋。
エンゲージリングのデザイン画でとんでもなく散らかった部屋だ。
できれば、きちんと完成したものを贈ってプロポーズしたかったのだが。
カッコなんかつけてる場合じゃない。
オレは半ば強引に、自分の部屋へ翠を引き入れた。
「なっ……えぇっ!?」
室内を目にした翠は、予想通り二の句を継げないほど驚いていた。
まぁ確かに改めて見ると、ちょっと引くぐらい描き散らかしたな。
まさかここまでアイディアが湧いてくるなんて自分でも思わなかったし、新しい扉を開いたって言うか、めちゃくちゃ楽しかったからオレとしてはいいんだけど。
やっぱり多少は片づけておいた方がよかったか、と紙をかき集めながら翠の反応を伺うと、
「……ゆびわ? わぁ、星型のダイヤ? こっちはバラね、素敵」
膝をついて、1枚1枚を真剣に見てくれている。
デザインに対する評価は悪くなさそうで、ホッとした。
「これ……まさか全部、キョウが?」
「あぁ」と頷いたオレは、床へ座り込む翠の前で膝をつき、視線を合わせた。
そして、自分の気持ちを正直に吐露していく。
どうせ手に入らないなら、何も望まない方がいいと思い続けてきた人生だったこと、それが翠に出会って変わったこと。
翠のことだけは、どんなことをしても欲しいと、諦めたくないと思ったこと――……
「必ず近いうちに最高の指輪を贈るから、その時はどうか、ここにはめてほしい」
想いを込めて左の薬指へ唇を落とすと、澄んだ双眸が大きく開いた。
告白ならともかく、まさかオレがプロポーズまでするとは思わなかったんだろう。
そりゃそうだ。
翠と出会う前のオレが聞いたら、腰を抜かすに違いない。