謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「もちろん返事は、ちゃんと指輪ができてからでいいんだけど……」
いろいろすっ飛ばした末のプロポーズ。
もちろん人生初のことで、経験もないし自信だってなかった。
普段は割と緊張なんかしないオレなのに、今日は動悸がほんとにヤバい。
心臓が口から飛び出しそう、という表現はこういう場面で使うんだろうな。
どうでもいいことを考えながら延々と待つが、なかなか彼女は答えてくれない。
オレが緊張しすぎて1秒を1分くらいに感じてるせいか……いや、待てよ?
やっぱりあそこが引っかかってるのか?
職業的なこと……なんと言ってもニートだし?
付き合うだけならともかく、結婚して子どもができたら、と将来設計について悩むのも不思議はない。
そうか、まずはそこの誤解を解かなきゃだな。
「み、翠? もしオレがニートってとこを心配してるなら、全然大丈夫だぞ? 貯金がないわけじゃないし、翠に金銭面で苦労させたりなんてしない。実はオレ、黙ってたけど――」
翠と子ども10人くらいは余裕で養える、と打ち明けようとしたところで、彼女に可愛く飛びつかれた。
「ぅわっ!」
「そんなこと全然気にしてない」
オレの頬を両手で押さえ、覗き込んでくる翠。
えっと、この展開は……
「お金なんて、どうにでもなるもの。ごめんね、ちょっと嬉しすぎて幸せすぎて、言葉が出てこなかっただけ」
嬉しい? ってつまり、OKってこと?
「指輪、楽しみにしてる」
いいんだよな?
バグッた頭でなんとか理解した瞬間。
胸の奥で爆発した感情に名前を付けるなら、幸福、だろうか。
幸せで。
幸せ過ぎて。
どんなに言葉を尽くしても陳腐になりそうで、何も言えない。