謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
エピローグ ハッピーエンドです!
それから1か月余りの時間が流れ、カレンダーは9月に突入。
昼間とは違ってぐっと秋めいた涼風のそよぐその夜、あたしはシェルリーズホテルにいた。客室ではなく、高い天井にいくつものシャンデリアが煌く巨大なボールルームの方だ。
「わぁ素敵。これ欲しいわ!」
「エレガントなデザインねぇ」
「限定品ですって。ぜひ買わなくちゃ」
カウンターでバーテンダーからフルートグラスを受け取ったあたしは、感嘆の吐息と歓声の方を振り返った。
広い会場には大勢のゲストが集まり、展示されたジュエリーに魅入っている。
その向こう、中央に設置されているのはランウェイ。
この後実際にジュエリーを身に着けたモデルがあそこを歩くんだって。
こんな豪華な新作発表会を、しかも七つ星と称される一流ホテルで開いちゃうとか、トワズすごすぎじゃない?
「話題になること間違いなしね」
グラスに口をつけてシャンパンをちびちび飲みつつ独り言ちてから、ひと際盛り上がっている一団へと視線を移した。
マスコミ関係者に囲まれているのは、キョウと華ちゃん(同い年だし、本人がそう呼んでほしいと言うので)。
さっきから2人をカメラマンたちが撮りまくってる。
社長令嬢である華ちゃんが、ゴージャスな緋色のドレスを見事に着こなしているのは当たり前として。
驚いたのはキョウの方。
今夜はデザイナーとしての彼のお披露目の場でもあるそうなので、正装してくるのはわかっていたけど……と、光沢のあるグレーのタキシードを纏った彼を遠目に眺める。
カジュアルな服ばっかりでスーツ姿すら見たことなかったから知らなかった。
こういう恰好もめちゃくちゃ似合うのね、あいつ。
全然服に負けてないっていうか、風格まで漂っちゃって。
まるで光り輝く貴公子って感じ。
結局のところ、お坊ちゃまだもんね。
場慣れしてるんだろうな。
もう大半の人が、少し前トワズの雑誌広告に登場して話題になった謎のイケメンモデルが彼だと気づいていて。
展示されたジュエリーと同程度、ううん、むしろそれ以上の注目を集めているみたい。