謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

優は、高校の時のクラスメイトだった。

当時は特に親しかったわけじゃない。

彼は学級委員とか生徒会とか、目立つ場所が好きな陽キャで。
どちらかというと一匹狼って立ち位置だったあたしとは、あまり接点がなかったから。

ところが3年前同窓会で再会した時、そんな彼から「綺麗になっててびっくりした。実は高校の頃から好きだった」って告白されて……。
あの白井くんがあたしを? って、ちょっと喜んじゃったんだよね。

その時だって、彼に特別な感情を持っていたわけじゃない。

ただ仕事が忙しすぎてなかなか出会いもなく、このまま一生一人なのかなって漠然と不安を抱えてた時期だったこともあって、OKしてしまった。
知らない人でもないし、愛だの恋だの、そういうものは後からついてくるだろうって自分に言い聞かせて。

実際、機嫌いい時の優は気前もよくて話題も豊富で、一緒にいて楽しい相手だった。セックスはあまり好きになれなかったけど、その前後はすごく優しかったし。
彼が好きなんだと、思ってた(・・・・)

所詮、思い込んでた(・・・・・・)だけなんだろうな。
すぐに別れ話ができて、かつ全然胸が痛まないのが、何よりの証拠。

あたしって、薄情な女だったんだなぁ。
優のこと、責めたりできないよ。

苦笑交じりにため息をつき、視線をゆっくり店内へ動かした。

デートの日には、遅刻常習犯の優をこの席で毎回のように時間潰しながら待ってたっけ。
“ライブラリーカフェ「books」”、という店名の通り、店内を埋め尽くす本棚には本がぎっしり並んでて。あたしはよく、デザインの勉強も兼ねて雑誌や写真集を見てた。

マンガが置いてないせいかお客の年齢層は高めで、話し声やBGMもうるさくなくて。
デート以外にプライベートでも来るくらいお気に入りの場所だったのに。
ここにももう、来ることないだろうな――


「あ、そうだ。それ返して」

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