謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
熱中できることを探してほしい、とは言ったけど、まさかこんな急展開になるなんて思わなかったなぁ。
複雑な思いを飲み込むように、あたしは再びシャンパンを口に含む。
もともと、キョウの才能を華ちゃんは高く評価していて、すでにいくつか実際に彼のデザインが商品化もされていたそうで――あたしが優に買ってもらったネックレスもキョウが考えたものって知った時は、びっくりしたなぁ――ようやく彼がやる気になってくれたと、華ちゃんからは大感謝された。
それからすぐに、彼をチーフデザイナーに据えた部署の新設がメディア向けに発表されて。
彼が輝ける場を見つけたことは本当に心から嬉しいし、よかったなと思う。
思う、のだけど……
視線を横へ滑らせると、窓ガラスにどこか不安そうな顔をした自分が映ってる。
今身に着けてるモスグリーンのミモレ丈ドレス、それからペリドット――8月の誕生石だ――とダイヤを使ったネックレスとピアスは、キョウからのバースデープレゼントだ。
発表会の準備に大忙しで、誕生日を一緒に過ごせなかったから。
ごめんっていうカードと一緒に届いたもの。
誕生日だけじゃない。
最近キョウはこの発表会の準備に大忙しで、ろくに会えなかったからな。
今夜はすごく楽しみだったし、ヘアメイクも頑張ったのに。
いざ会場に着いてみたら、久しぶりに会うのに全然こっち見てくれなくて、視線も合わない。
もしかして、寂しいとか思ってるの、あたしだけなのかな。
「……はぁ」
ブルーな気分を振り払うように吐息交じりに軽くかぶりを振ったところで、クラッチバックの中から振動を感じた。
空いたグラスをスタッフへ渡してからスマホを確認してみると――藍からメッセージだ。
【わたしが掘ったんだよー! お姉ちゃんにも送るね!】
土のついたサツマイモの写真が現れて、ふっと頬が緩んだ。