謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
視線を上げれば、細身の長身によく似合う、タキシード姿の男性が近づいてくるところだった。
「中里さん、こんばんは」
「ご無沙汰してます、相馬さん。ほう……これはこれは、なんというか……」
間近までやってきた中里さんは、あたしを無言のまま見つめてくる。
オフショルダーで露わになったデコルテ部分に特に視線を感じて、何かおかしいのかと落ち着かなくなった。
「えっと……似合いません、か?」
首を傾げると、くすっと小さく相手が笑う。
「まさか、その反対ですよ。あまりに美しくて、僕があいつより先に出会いたかったと思ってしまっただけです」
「は、はは……持ち上げても何もでませんよ?」
「結構ですよ。本心なので」
さすが広報、口が上手すぎ!
「あはは……ありがとうございます。ええと、中里さんは、こんなところにいらっしゃっていいんですか?」
「はい。準備はもう終わってますしね、あとは見守るだけです。……で? 何か心配事でも? なんだか浮かないカオだ」
心の中を見透かされたような気がして、ドキッとした。
「いえ、何も」
慌てて取り繕うものの、相手には通じなかったみたい。
「そんな辛そうなカオで言われると、ますます気になりますね」
「ふむ、なんだろう?」と芝居がかった仕草で腕を組んだ彼は、あたしを探るように見下ろす。
「あの彼は、もう逮捕されたんですよね?」
「あ、優――白井さんのことですね、えぇ先日」
あたしは頷いた。
まさか優が逮捕される未来が来るなんて、夢にも思わなかったけれど。