謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「察してやってください。あのルックスで金まであったら、彼を巡ってどんなえげつないバトルが起こるか。実際、僕は学生時代に京吾がそういうトラブルに巻き込まれたのを見てますからね。なかなか言えなくて、そのうち機会を逃してしまった、っていう彼の気持ちもわかるんですよ」
「もちろん、あたしもわかりますよ。だから別に全然怒ってないです」
ただ、ようやくそれを教えてくれたのが彼のご家族だった、っていうのはどうかと思うけど……。
それは数週間前、彼の実家へ初めて婚約者としてご挨拶に行った時のことだ。
わざわざ玄関で迎えてくれたお義父様、お義母様、お義兄様、侑吾さんは、さすがというか美形ぞろいのど迫力。
幼少期も含めて、疎遠な関係のことは聞いてたし、
こんな平凡な嫁にキョウが支えられるか! ってあたしが言われるか、
逆に、お前に家庭が持てるはずないって、キョウが言われるか、
いずれにせよ、壮絶なダメ出しで結婚を反対されることは覚悟してた。
だから、先手必勝とばかり……
――あたしがしっかり働いて、家計を支えます。ご実家には絶対に迷惑かけないようにしますので、どうか結婚を認めてください。
って、今思い出してもこっぱずかしい宣言、しちゃったのよね。
全然知らなかった。
まさかキョウが20代前半でFIRE達成してて、個人資産が“億り人”と称されるレベルに至ってるなんて。
生活の心配はしなくていいよ、とお義父様から優しく説明された時のあたし、相当な間抜け面をしてたと思うわ。
――翠が金目当ての女とは違うんだって、うちの家族に理解してもらえたんだからいいじゃないか。めちゃくちゃ喜んでただろ。
喜んでた……いや、みなさん大ウケしてたような気が……?
『ウケたんじゃなく、感動して感激してた』んだって、キョウは言ってたけどね。
とにかくアットホームな雰囲気で唖然としちゃった。
もっと会話の少ない冷ややかな家を想像してたのに、全然違うんだもの。
キョウによると、藍の捜索のために自身の家族を頼ってくれたらしく、そこから一気に「数年分の距離が縮んだ」、らしい。
「翠のおかげだ」って言われたけど、それって単に今まで会話が足りなくて、距離感が掴めなかっただけじゃ……??
まぁ、何はともあれ、結婚については皆さん大歓迎してくださったので、結果オーライ、かな。