謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
柔らかなテノールが話し始めるや否や、「えー超カッコいいんですけど!」「ヤバいっ、神?」「絶対推す!」とか、あちこちから興奮気味の囁きが聞こえた。
【まさか自分が、こんな場所に立つとは思いませんでした。人使いの荒い友人を持つと、非常に苦労しますね】
【あら、自分からやるって言ったんじゃないのー】
【チーフなんて聞いてない】
軽妙な2人のやり取りに、ドッと笑いが起きる。
「なんかいい雰囲気。友人とか言って、実は公私ともにパートナーだったりしてー」
「あり得るー美男美女でお似合いだよね!」
周囲の声に、耳を塞ぎたくなった。
やっぱり誰が見てもそう思うよね……って、あぁいやだ、キョウのこと全部受け入れるって決めたのに。
たった1か月でこの体たらくは何?
こんなんじゃ結婚なんてできないわよ、しっかりしなさい!
必死に自分を叱咤するものの、どうしても考えてしまう。
キョウに相応しいのは、あたしじゃなく――
【数年前の私が今夜の私を見たら、きっと腰を抜かすでしょう。目的も目標もなく、流れていく日々にただ身を任せる怠惰な生活を送っていた、以前の私なら。そんな私を変えてくれたのは、一人の女性との出会いでした】
「きゃーっやっぱり!」
「あの社長さんとデキてるんじゃない?」
「交際宣言ってやつ!?」
やだ、聞きたくないっ。
身体を固くして、組んだ両手にギュッと力をこめる。
もう逃げてしまおうか、そう思ったあたしの耳へ、心地いいテノールは無情にも次なる言葉を紡ぐ。
【彼女と出会ったのは、とあるカフェです。彼女は私の斜め前の席に座っていて、雑誌を眺めていました】
…………ん? カフェ?
華ちゃんは幼馴染じゃ……
【常連客なのでしょうか。店員との会話を聞くともなしに聞いていると、彼女がトワズのネックレスを褒めてくれているのがわかりました。『これを見てると、幸せな気持ちになれるのよね』と】
……んん?
なんか、それって……