謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「早く早くっ! すみません、そこ通していただけます? あぁごめんなさい、ちょっとどいてーっ」
えぇええ? ちょっと待って⁉
ど、どうしようっ。
頭は真っ白。
ぐいぐい引っ張られるまま、つんのめるように歩を進めていくあたし。
「翠」
人垣が割れた先、舞台上から手を差し出すキョウがいた。
こ、ここに上れってことだよね?
紹介、してくれるのは嬉しいけど、いやいや、あたし部外者だし一般人だし、遠慮しますっ。
気持ちだけで十分ですっ。
無言のままぷるぷる首をふりまくるが、しびれを切らしたキョウが強引にあたしの手を掴み、舞台の上に引っ張り上げてしまう。
「ちょ、キョウッ!」
悲鳴交じりに声を上げて、咎めるように睨んだのに、サラッと無視された。
彼は、あたしを片腕に抱いたまま再びマイクへと語りだす。
【私事で大変恐縮ですが、本日この場にいらっしゃる皆様方には、ぜひ証人になっていただきますようお願いいたします】
「証人?」「え、何?」
「何が始まるんだ?」
好奇の視線が集中して居たたまれずに身じろぐあたしを、【翠】と甘い声が呼んだ。
【君を愛してる。ずっとこの先命ある限り、君だけだと誓う。だからどうか、オレと結婚してください】
間近にあたしを見つめてそう告げた彼が、おもむろに離れていく。
そうしてあたしの前に跪き、四角い小箱を差し出す――彼の手が蓋を開けると、輝くリングが現れた。