謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「え?」
思い出に浸っていたあたしは、優の一言で視線を彼へ戻して。
そして、差し出された手と彼の顔とを交互に見比べた。
「限定品で高かったんだ。売ればそこそこになるだろ。ダイヤついてるし」
その目線の先にあるネックレスを、ドキリとしつつ探る。
これのこと、だよね。
彼氏からのプレゼント、という以上にデザインが気に入ってて、毎日のマストアイテムで。
締め切り前には、上手く乗り切れますようにってこれに願掛けするのがルーティーンになってたり……
……はぁ。仕方ないか。
今度はちゃんと自分で買おう。
名残惜しくひと撫でしてから、のろのろと留め金を外し、差し出された手に乗せた。
「翠の部屋にある僕の荷物はまとめて送ってくれ。僕の方にある翠のものは――」
「捨ててくれていいから」
歯ブラシとかスキンケアグッズとか、大したものじゃない。
思い出しながら答えると、優は頷いて立ち上がった。
「じゃあこれでお別れだ。元気でな」
「うん。そっちもね」
話し合いは終わり。
あっけなかったな。
あーコーヒー飲み逃げしやがったわ……まぁいいか。今日くらい。
遠ざかっていく背中を見つめて、あたしはなぜか、ホッとしている自分を感じていた。
キョウから「会える?」と連絡が来たのは、それから数日後のことだった。