謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
ペリドットとダイヤ――ネックレスやピアスとお揃いだ――が仲良く並んだ、エレガントなデザインのリングだった。
すごくすごく綺麗……あぁ、約束の指輪だ。
約束、ちゃんとキョウは守ってくれたんだ。
胸の奥で温かな何かが風船みたいに膨らんで、視界が瞬く間にぼやけていく。
「翠、返事は?」
「っ……あたし、でいいの……?」
「このリングをはめることができるのは、世界にたった一人、翠だけだ――はめてくれるだろ?」
懇願するような眼差しはどこまでも真摯で、あたしの感情を昂らせていく。
あぁ……もうダメだ。
ぼろぼろと溢れ出す涙と共に嗚咽を漏らし、必死にぶんぶん首を縦にすると、彼のカオがくしゃりと嬉しそうに綻ぶ。
おずおず差し出した左手を彼の手が取り、薬指にするりと指輪をはめてくれた。
途端。
わぁあああっ……
耳が壊れそうなほどの大歓声と口笛、拍手の嵐が会場に響き渡り、あたしは改めてこんなにたくさんの人がいたのかと、震えあがった。
「もうこれで逃げられないからな」
立ち上がったキョウはあたしの腰をがっちり抱いて、耳元で囁く。
あたしは白旗を上げるように笑うしかない。
「逃げないよ。キョウも逃げられないからね?」
「望むところだ」
小さく笑い合って、額に優しい口づけを受ける。
一段と大きな歓声と女性たちの悲鳴が沸いた。
ずっとずっと、一緒にいようね。
10年後も、30年後も、ずっとずっと……
止まらない涙のヴェール越し、あたしは彼の笑顔を目に焼き付けた。