謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「嘘、もう来てるっ」

土曜日の午後、指定された駅に降り立ったあたしは、駅前のロータリーですぐにその目立つ姿を見つけた。

優の遅刻癖もあってギリギリに到着する癖がついてしまったせいだと、反省しきりで足早に近づいて行く。

すると相手もこちらに気づいたのか、車にもたれていた背を起こし、口角を引き上げてスマートに手を挙げてくる。

う。明るい所で見ても、やっぱりキラッキラしてる。
正統派の美形だよねぇ。

前回のカジュアルスタイルと違い、今回は白シャツにジャケット、テーパードパンツを合わせて、大人っぽい装い。
それでもフォーマルすぎる雰囲気にならないのは、ネックレスとかブレスレットとか、うるさくない程度の小物で“きちんと感”を崩しているからだろう。

どこのブランドのアクセかな。
レザーとチェーンを組み合わせてて、シンプルなのにすごくお洒落。

優はそういうの全然つける人じゃなかったから、めちゃくちゃ新鮮で素敵に映る。

ドギマギしてしまいながら視線を揺らすと、彼の後ろに停まる真っ赤な車のエンブレムが視界を掠めてギョッとした。

ぁあの、有名なお馬さんのシルエットはまさか……ふぇ、フェラーリでわっ!?

うーわー、やっぱりセフレ30人いそう(←妄想)……と思ったかどうかわからないけど、高級外車と超絶イケメンの取り合わせは週末の混雑の中でもやはりひときわ目立ったらしく、みんな足を止めて振り返っていく。

もっと頑張ってくるべきだったかな、と無難な自分の服――アンサンブルニットとスカート、上からスプリングコート――をチラ見てさらに歩を進めながら、改めて“こいつ何者?”って考える。

三千万っていう金額をポンと用意できるくらいだから、間違いなくお金に困ってなさそうではある。が、会社勤めって雰囲気でもないのよね。

フリーランスっぽい、自由人な感じ。
モデルか俳優……芸能関係?

うーん、あたしだって仮にもマスコミ業界の片隅に生きてる人間だけど、全然心当たりがない。
こんな超絶美形、一度見たら絶対忘れないと思うのよ。

やっぱりホストかしら。
大金持ちの奥様のヒモ、って可能性も……

< 25 / 246 >

この作品をシェア

pagetop