謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
黒沼のサインが入ってる。
ほんとに約束守ってくれたんだ。
めちゃくちゃ嬉しい……こんな神様みたいな良い人に会えるなんて、あたし前世でどんだけ徳積んだの?
「これで、妹さんも君も、自由の身だ。よかったな」
優しく目を細める彼の顔が、視界の中で潤んで歪んでしまい困った。
「あり、ありがとうございますっ……なんてお礼を言ったらいいのか……」
「礼なんていらない。オレは対価をもらうんだから、それでチャラだし。あぁ、感謝してくれるなら――」
肩をすくめて言った彼は言葉を切り、不満そうな色を滲ませてこちらを流し見た。
「それ、止めようぜ」
「それ?」
「敬語。名前も、呼び捨てでいい。たぶん同い年くらいだし」
「同い年? え、いくつですか?」
イケメンって年齢不詳なのよね。
服装や表情で、全然違って見えるし。
ただ彼の場合、黒沼みたいなヤツを前にしても余裕があって一歩も引かなかったし、少し年上かなと勝手に考えてて――
「29」
え、って固まっちゃった。
ほんとにピンポイントで同い年じゃない!
「ほら、やっぱり同じなんだろ? 敬語なんていらない」
「はは、は……そうですね、じゃなくて、そうだ、ね」
あたしがなんとかタメ口に変えてみると、キョウはくしゃっと目尻を下げて「そう、その調子」と喜んだ。
途端、その無邪気な笑みに心臓がぎゅんっと射抜かれた心地がして、とっさに顔を逸らして、胸を押さえてしまった。
いやいや、何ドキドキしてんの。
……さすがイケメン、コワイ。
あたしはぶるっとかぶりをふり、座席に小さく身体を縮めた。