謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

車に乗り込む必要もないんじゃないか、ってくらいの短距離ドライブ。
5分程度で、そこには到着した。

ラブホへ直行するのかと思っていたのに、その前に買い物に付き合ってほしいそうで――

「さ、どうぞ。入って」

わざわざ先に立ってドアを開けてくれたキョウが、あたしをスマートに促しながら微笑む。

「えぇと、き、キョウ? ここ、なの?」
「あぁ、そうだよ」

あたしは戸惑いつつ、そのお店へ足を踏み入れた。

白い壁で囲まれた店内は開放感のある作りになっていて、女性用の洋服がディスプレイされている。
上品に、わずか数点が並ぶその光景は、大量生産されるファストファッションのショップとはまるで違う。一目で、ここが高級なブティックだとわかった。

え、なんであたし、ここに連れてこられたの?
ここ、女性もののお店でしょ?

何か、買いたいものがあるって……?

意図がわからず立ち竦んでいたら、店の奥からスタッフらしき女性が顔をのぞかせた。

「あらあらまぁ! いらっしゃいませ。き――」
「あぁ店長。キョウです(・・・・・)、お久しぶりですね」

「……」
キョウの言葉に、なぜか面食らったように口を噤むアラフォーらしき店長さん。
しかし、あたしが二度見した時には「はいはい、キョウ様。お久しぶりでございます」と営業スマイルで頷いていた。

「本日は何をご用意いたしましょう? こちらのお嬢様のお洋服でよろしゅうございますか?」

「えぇ、そうなんですよ。初デートでね。何かプレゼントしたいと思って」

「へ!?」

デートって、プレゼントって、何!?
あたしたちそんな間柄じゃないでしょ!?

「まぁそれは素敵ですね。ぜひお手伝いさせていただきますわ」

「ちょ、ちょっとキョウッ」

< 28 / 246 >

この作品をシェア

pagetop