謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
キョウに初めて抱かれたのが、3月の終わりだったっけ。
翌朝目を覚ますとすでに彼の姿はベッドになく、『朝食はルームサービスで好きなものを』『チェックアウトの時間は心配しなくていいから』、というメモだけが置かれていた。
彼との一夜はいい意味で予想を裏切る素晴らしい体験で、あたしはものすごく堪能させてもらったけれど、彼のように経験豊富な男性側からすると、物足らなかったかもしれない。
もしかするとこれっきりってことも……、と考えたりもしたのに、そうはならなかった。
その後も、大体週に1回程度呼び出されて。
食事してからホテル、という流れで、あたしたちは今も定期的に身体を重ねている。しかも週末とか、時間がある時は食事の前にショップへ連れていかれて、初回と同じくブランドものの服やら靴やら買ってくれたりもして。
三千万で女を買おうとするくらいだから、よっぽど特殊な性癖の持ち主なのか、って身構えたこともあったけど――縛られたり、ロウソク垂らされたり、とかね――蓋を開けてみれば全くそんなことはなく。
内容はごくごく健全(?)なセックスなんだよね。
あまり大きな声じゃ言えないものの、むしろこっちがお金払わなきゃいけないんじゃ、と思ってしまうくらい、毎回とろとろに感じさせてくれる。ちゃんと避妊だってしてくれるし。
そう。キョウって、デートの時は完璧なのよ。
最初に言ってたよね。
1度寝ただけで彼女面されて困ってるって。
あの時は、すごい肉食系女子がいるんだなぁって思っただけだった。
でも、今ならわかる。
彼女面したくなる女の子の気持ち。
断わっても断っても、高価なプレゼントを惜しげもなくくれて。
一緒に美味しい食事と会話を楽しんで。
さらにあんな、最愛の恋人にするみたいに毎回激しく抱かれたら、そりゃカン違いもしますって。
クズニートってスペックを差し引いても、ずっと一緒にいたいって思っちゃうのは仕方ない。
あたしは大丈夫よ?
最初に釘さされたし、ちゃんと自分の分はわきまえてる、つもり。
……ただ。
この頃ホテルで一人目覚めると――キョウは必ず夜明け前に出ていく――、なぜかモヤモヤしてる自分がいる。
あたしは何番目だろう? 彼の腕の中で、一緒に朝を迎えた女はいるんだろうか?
ホテル以外の場所で彼とデートできる女は? 彼の自宅に招かれた女は?
……とか、いろいろ考えてしまって。