謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?
「そういえば、田所さんて今日はずっと外ですか?」
「あー確か撮影で直帰だったような気がする。あたしから何か、伝えておこうか?」
「あ、ライン送っとくので大丈夫なんですけど。田所さんが喜びそうな合コンメンバー、集められたので。早く知らせたくて」
「合コン?」
「うわーまた?」
あたしと奈央は呆れ顔を見合わせた。
「せっかく見た目も性格も悪くないのに、あいつはガツガツしすぎなのよ。さすがに女の子引くってー。ねぇ翠?」
「まったくね。数打ちゃ当たる、ってものでもないだろうに」
あたしが同意すると、加藤ちゃんは「お二人はいいですよねー」とジト目を向けてくる。
「リア充の方には独り身の肩身の狭さはわかんないですよー。さすがに私もそろそろ推し活ばっかりってわけには……まぁ、もちろん推しを理解してくれる人を探すつもりなんですけどね。お金めちゃくちゃ使っちゃうんで、一緒に推し活してくれるくらいの人じゃないと。これがまた難しくてー」
確か、彼女の推しってヨシモトの誰かだったっけ。
入社してきた時に言ってたから、随分一途に推してるんだな。
推しにお金、ねぇ。
それで思うのは、やっぱり藍のこと。
あの三千万も推しに使ったんだろうか。
結局それが誰かは、分からないままだけど……
声優の誰かが好き、って言ってたよね。
名前、ちゃんと覚えておくんだったなぁ。
チラリと考えたところで、加藤ちゃんと目が合った。
「ところでリア充と言えば、相馬さんて最近彼氏さんと喧嘩でもしました?」
「え、ええ?」
「だって、いつもしてたトワズのネックレス、最近つけてないですよね? 彼氏さんからのプレゼントでしょう?」
う、鋭いっ。
反射的に何もつけていない胸元を押さえれば、奈央も「そういえば」と目を見開く。
あー……これは誤魔化せない雰囲気?
うーん、まぁいっか、別に隠してるわけじゃないし。
早々に観念したあたしは、吐息交じりに「実はあたしさ、別れたんだよね。彼と」って打ち明けてしまった。
2人は絶句。
「あはは、まだ言ってなかったっけ?」
「聞いてないよっ」
「聞いてません!」