謎のイケメンニートが「オレに任せろ」とか言ってくるんですが、大丈夫でしょうか?

「「いつ!?」」

「え、えとぉ……2か月くらい、前?」

「2か月も前っ!? どうして言ってくれなかったのよ、ひどいじゃない翠っ!」
「そうですよ、水臭いじゃないですか!」

「え、えぇ……」
2人の勢いにタジタジとなるあたし。

ほんと、忘れてたわ。
それどころじゃなかったんだってば!

「ごめんごめん、なんかいろいろあって。言うの忘れてた。ほら、仕事も立て込んでたし――」

口ごもりつつ言い訳をしかけたところで、グリーンの向こう側から「おーい加藤、そこにいるかぁ? 電話~」との声がかかった。

「あーもー大事な時に! 相馬さん、後でちゃんと聞かせてくださいね! 沢木さん、紅茶ゴチでーす」

加藤ちゃんがバタバタとその場を離れていき、なんとなくホッ――としたのも束の間、隣から無言の圧を感じて、ギギギ、と顔をそちらへ向けた。

「ほんとなの? 2か月も前に白井さんと別れたって」

奈央には優を紹介したこともあったからな。
そりゃ驚くよね。

「うん。本当」
「でも、結婚の話だって出てたじゃない。彼パパや彼ママとも仲良かったでしょう?」

「あーまあね。頑張って仲良くしてた感じかな」

今思えば、相当必死だった。

結婚後のことを考えて、ちゃんとしなくちゃって。
2人が上京する時は自分からアテンドを買って出て、ホテルやレストランの予約、お土産のセレクトまでやってたし……。

実際は、セレブ気取りの2人に話を合わせるのはかなり苦痛だったんだけどね。

「理由は? まさか白井さんが浮気? 合鍵で部屋に入ったら、ヤッてるところだったとか!?」

「あはは、小説の読みすぎだよ奈央」

笑って、「彼のせいじゃないの」と否定しておく。

「ちょっと事情があってね、別れざるを得なくなって……けど、後悔はしてないんだ。結局、彼が好きで結婚を考えてた、っていうより、適齢期に付き合ってた相手が彼だったから結婚を考えてたんだ、って気づいたし」

今はもう、どうして付き合ってたのかも思い出せないほど、全く未練はない。

清々しいくらいきっぱり締めくくるあたしとは対照的に、彼女はなぜか「ふぅん」と微妙な表情。

「え、何? 何かおかしい?」

「……けど、もう新しい相手はいるんでしょ、誰か。だって最近、翠キレイだもん」

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